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どれだけの時間眠り続けていたのか、言われてみれば確かにサンタクロースはプレゼントが詰まっていた大きな袋を持っていない。 サンタクロースの首に回されたわたしの腕の中には、ちゃんとイブがいた。ふと疑問がわく。 「サンタさんって、トナカイのひくソリに乗るんじゃないの」 「あー、夢を壊すようで悪いけど、僕の住む国にトナカイはいないんだ。だからソリも乗らない」 「でも、あの袋ってすごく重いんでしょ。どうやって運ぶの?」 「それは秘密」 サンタクロースは笑みをふくんだ声でそう言った。 わたしがサンタクロースについて知っていたと思っていたいくつかは外れていたけど、何よりも重要な、「プレゼントを配っている間は時間が止められる」ことが事実であれば、壊れる夢はない。 雪を踏む。風が吹く。息を吐く。会話がやんで、静けさを取り戻した雪原。先の見えない空間。 きっと家族のいる家からは遠く離れた場所。確信は持てないのに、なぜだか安心感に包まれる。
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