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目を閉じ、開ける。ただの1秒もかからないまばたきを終えたわたしは、目を疑った。 さっきまでは確かに何もなかった雪原に、突如森が現れたのだ。 正確に言えば、わたしをおぶったサンタクロースが歩いているのは既に雪原じゃなかった。 サンタクロースの背中に預けていた身を起こして周囲を見回してみても、そこは木々に覆われた森の中でしかなかった。 「なに、これ」 戸惑いが思わず口をつく。サンタクロースが瞬間移動できるなんて、どの本にも書いていない。 「サンタさんって、魔法使いなの?」 「サンタクロースはサンタクロースだよ。ほうきで空は飛ばない。君にとっては不思議なこともあるだろうけど、深く気にしないでいてくれるとありがたいんだけどなあ」 今更ながら、わたしはとんでもなく危険な道を選んでしまったのかもしれない。 だけど、彼はサンタクロースで、わたしは人間だ。入り込んではならない領域だって、当然存在するだろう。追及を避ける言葉に従う以外の選択肢は、生憎持ち合わせていない。 「寒くない?」 「んーん。だいじょうぶ」 フード付きのコートを着ているとはいえ、雪は木々の間を縫って降り注ぐ。覆われていない顔や耳に凍て付く風が吹き付ける。だけど寒さには慣れている。 冬に暖房もついていない部屋の中を半袖で過ごしたときよりも、外で感じる寒さの方が、今は幸せだ。
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