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「どこか、行くあてはある?遠くで君は、どうやって暮らしていくの?」
両親のことは伏せ、願いだけを端的に話すと、サンタさんはそう問うた。世間知らずの子供を馬鹿にするのではなく、優しい眼で、諭すような口調で、つかんだ手は放さないままで。
「あてなんてなくても、ここにいるよりはずっといい」
「……小さな子が何も持たず、寒さをしのげる家も、食べ物もない。とても危険で、下手すると死んでしまうかもしれないんだよ」
「自分で死に方や死に場所を選べるだけで充分よ」
「悪い人に捕まって、ひどい目に遭ったとしても?」
「それはそれで見てみたいくらい。絶対に、わたしはここを出る」
夢を与えるサンタクロースは、起こり得る現実を優しい言葉で伝える。
実の家族から与えられる仕打ちより恐ろしいものがあるのなら、それが自分の身に起きたなら、わたしはもっと世界に絶望できる。
1年に一度の聖夜を待たずに、捕まることも恐れずに、逃げ出す勇気を持てるだろう。
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