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こうなれば降参したフリをして立ち回るしかない。
両手首を縄で縛られ、無理矢理歩かされる。
その間に頭の中で戦闘のシュミレーションをする。
うまくいく、はず。
自信があるというよりも、自分の体が確信している。
「そういうのは、いただけへんなぁ」
男の声がしたと思うと、手首の縄を持っていた男が倒れていた。
時間にして1秒のことだ。
人質の女の子を解放し、他のテロリストを倒すのに3秒。
そこでようやく私が第三者に助けられたと気付く。
「ありが、とうございます」
「いえ、大したことはしてないですよ」
開放した女の子に向かい気さくに笑う男が私の前方にいた。
褐色の肌、茶色の短髪、琥珀の瞳の男性。
私は彼に太陽を見た。
身のこなしが鮮やかで余計な動きがなかった、彼は何者?
勝手に足が彼に吸い寄せられていく。
「助けていただいてありがとうございます。あの、お礼をさせてもらえませんか?」
普段の私からは想像もつかない言葉が自然と出ていた。
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