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「自分で言うのもなんだけど、そんな理由で断るには勿体無い作品よ。リリアなら最高のルチアを演じられるはずだから」
真剣な瞳でアーティに見つめられ、私はなんとも言えなくなってしまった。
自分の中で演じたい自分と演じたくない自分が葛藤している。
「確か、あなたの俳優としての初仕事が“静寂のルチア”だったわね……」
「ええ……」
今から10年前、16歳のときに当時私の所属していた事務所は私の扱いに困っていた。
赤ちゃんモデルから始まった私の芸能活動はとても順調とは言いがたいものだ。
ようやく有り付けたティーンズ雑誌のモデルの仕事も私の人気がないため、降ろされる話になっていたときだ。
不人気の原因は私の勝気で上からな態度らしい。
私はそんなつもりはない。
ただ、モデルの仕事は贅沢な話好きではなかった。
昔から私は芝居が好きで女優志望だったから、女優として育てようと事務所が足がかりの作品として選んだのが、『静寂』だった。
オーディションを受けたときの私は緊張してガッチガチ。
とても満足のいく結果じゃなかった。
でも運命の神様はイタズラ好きみたいで、曲がり間違って主演のルチアに選ばれてしまった。
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