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この静寂は実話を基にしたラブストーリーで、主人公のルチアは婚約者がいながらバカンス地で出会った男と燃え盛る炎のような恋に堕ちていく。
婚約者と運命の恋人の間で心揺れるルチア。
最後は運命の恋人と心中する。
そんな悲恋ーー。
私は当時、この静寂という話を読んだことなかった。
初仕事で初舞台で初主演。
それがすごく嬉しくて主演に選ばれたその日に静寂を買って読んだ。
気合も十分に入っていたし、スタッフにも共演者にも恵まれていたはずだった。
「どうしてそんなルチアが嫌いなの?」
「だって婚約者がいながらホイホイ他の男と恋をして心中までする想いなんて私には理解できないわ。だいたい、心中なんて弱い人間がする逃げよ」
「もう……」
困った顔をするアーティには悪いけど、私にも譲りたくないものがある。
私は胸の奥に閉まっていた苦い記憶を思い出す。
初仕事、初舞台、初主演。
気合も十分に入ってスタッフにも恵まれていたのに。
初演日から舞台は大コケ。
未熟なのは自覚していたし、それを補うべく努力もした。
私なりのルチアを精一杯表現したはずだった。
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