序幕・【舞台・静寂】

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この話自体がチグハグしている気がして。 運命の人と出会うシーン。 婚約者のルチアに対する態度。 運命の恋人と逃げて心中するときのキス。 運命に流されるような恋心に翻弄されてゆく彼女の気持ちがわからない。 私には全てが軽いヒロインのような気がしてならなかった。 だから正直、ルチアって役が私には荷が重い。 私だって恋愛経験はあるし、それを表現してきた。 そしてそれなりの評価をもらってきたから、今や私は16の私に手を焼いていた事務所の看板女優だ。 別に浮気がいけないとか、恋する期間が短すぎるとか思わない。 そういう恋だって私は経験している。 でも何度読んでも、何度ルチアを演じても私はルチアの気持ちが理解できない。 「久しぶりの舞台で意欲を出すのはよくわかるわ。でも私にルチアは無理なの。他の人の方が上手く演じられるはずよ、そのほうが舞台も成功するでしょう」 自分で言いながら少し悔しい。 アーティの書く舞台・静寂を私は演じてみたいと思っている。 他の女優が演じるルチアを見たくないとも思ってる。 けど私にルチアを演じる実力はまだない。 私は自分の納得のいくルチアを見つけられずにいるのだ。
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