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アーティは観念したと笑っていた。
「時間をちょうだい」
私は手記を持ち帰って読むことにした。
きっと甘い恋の文字が書き連ねているに違いないと思って。
私は手記を読み出すと止まらなくなっていた。
私のイメージする可愛くて惚れっぽくて精神に実年齢の伴わないルチアはすぐに消えた。
私はシャッテンという女性に惹かれ、共感してしまう。
シャッテンは私の考えていたルチアとは正反対の女性だった。
常に自分を律し、人を愛することに不器用で孤独な女性。
それでも恋に堕ちた。
恋心に抗えず、困惑し、苦悩する。
複雑な生い立ちも相まって、シャッテンの人生は涙で彩られていた。
そして、悩み抜いた果ての結末は運命を呪う以外の選択はできなかったのだろう。
ページを閉じると涙が出てきた。
こんなにも胸に沁みてシャッテンに感情移入するとは思わなかった。
涙を拭いながら私はアーティに電話を掛けた。
「もしもし、アーティ?話があるの」
「答えを、聞かせてくれるのね?」
「ええ、私にシャッテンを演じさせてほしいの。私からお願いさせて?他の女優にあなたの書くシャッテンを演じさせたくないわ」
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