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重なる木々の間から陽が差し込んで、光りを広げていく。
時折頬に触れる風にやわらかさを感じながら、青年は目を細めた。
ゆっくりとしゃがんだ青年は、光りを弾いて煌めく蒼い湖から、水を掬う。
掬った水を口元に運び、首の後ろで一つにまとめている漆黒の髪に少し零しながら、青年は飲み下した。
濡れた口元を拭って、立ち上がりながら湖を見つめる黒髪の青年の瞳は、深緑色を宿すもの。
鋭い光りを持った瞳をふっと和らげ、黒髪の青年は振り返った。
「―――どうしました、朔王子」
黒髪の青年が振り返り、視線を向けた先には、同い年くらいの金髪碧眼の青年がいた。
「…………敬語をやめろ、刻」
朔王子と呼ばれた金髪碧眼の青年が不満そうに言った。
「え、嫌ですよ。サボリーの馬鹿王子の命令に従うつもりなんかありませんし」
刻と呼ばれた黒髪の青年は、にこやかに言い切った。
「……サボリーって言うな」
「……………ソコですか」
刻はつい突っ込む。
「他に何を言えと?」
刻は思った。
やっぱりこの王子は、馬鹿だ、と。
刻の表情から思考を読み取ったのか、刻曰く馬鹿王子である朔が眉を寄せる。
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