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「お前に比べたら、俺すらも馬鹿だろーが」
「そうですか?お褒めに頂き光栄にございます、朔王子」
刻はそう言うと、しゃがむように片膝をつき、頭を垂れた。
「!? 止めろっ!! 誰がそんなことをしろと言った!?」
一瞬で泣きそうな表情になり怒る朔に、刻は仕方ないとため息をつき、立ち上がった。
「朔王子、単なる悪ふざけですから。怒りをお収めください」
臣下の礼を取らず、真っ直ぐに朔の瞳を見つめて、刻は言った。
「………もう、二度と、……こんな悪ふざけはするな………」
朔の震える声に、刻は無言で首肯した。
「………朔王子」
「………………」
刻が何度目かの呼び掛けをするが、朔は依然として無視したままだ。
朔は黙したまま、近くの木に背を預け、座り込んで湖を見つめている。
刻はそんな朔を見つめて、思った。
(いろんな思いが渦巻いていそうだな……)
流石にあの悪ふざけは質が悪かったか。
(……めんどくさい……)
もう、帰ってしまおうか。刻がそう考えていた時、ようやく朔が口を開いた。
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