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すっかり夜になり、闇に包まれた木々と湖の近くで。
朔は刻と木に寄り掛かり、眠っていた。
「まったく……。泣くだけ泣いて寝るって、どこの子供だよ」
刻は微苦笑しながら、朔の目に残っている雫を優しく拭き取った。
やわらかい金髪に触れて、目を閉じたかと思うと、刻はそっと唇を寄せた。
ほんの束の間、時が止まった。
「……護るさ。なにがあっても」
髪から唇を離し、刻は小さく呟いた。
朔は気付かずに、未だ眠ったままだ。
そんな朔に微笑んで、刻は湖に目を向けた。そこには、木々の間から微かに漏れ出てる光りを弾く、煌めく闇色の湖。
刻は、朔に寄り掛かられていないほうの腕を空に伸ばした。
「―――護る。例え、何を犠牲にしたとしても」
木々が隠している月に向かって、刻は呟いた。そして、目を閉じた刻の頬を伝う、一滴の雫。
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