第2章 望月の君

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どたどたどた。 ばたばたばた。 だんだんだん。 「うるせえ!!!誰だ、こんな朝早くから走り回ってんのは!!!」 「土方さん、それでも巳の刻(午前10時くらい)ですよ。お寝坊さんですねえ。」 すっかり着替えて髪も結わえた沖田が呆れたように言った。 「総司は黙ってろおぉぉぉ!!!!」 ばたん 「土方さんたいへんだ!!!」 荒々しく襖を開け、騒々しい物音とともに駆け込んできたのは原田であった。 彼も寝起きなのか、帯も髪もぼさぼさである。 貴重な睡眠時間を邪魔された副長、土方歳三はその形の良い眉をひそめ鋭い眼光で足音の主を睨んだ。 「なにがだ」 「来たんだよ!!」 「誰がだよ」 「あいつが!!!」 「てめえなあ・・・!!!!!」 話の筋をとらえない原田の話し方に土方が沸騰しそうになったその時。 ことり。 「おや、恵比寿屋さんですか。遅かったですねえ」 湯呑を静かに置き、ひとり楽しげな沖田が呟いたのであった。
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