第2章 望月の君

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「うーん、呑みすぎたかな・・・そんなに呑んだっけ・・・熱燗何本あけたっけ・・・うわー覚えてないとか」 わんわんとなる頭を抱えて藤堂はその場にがくっと座り込んだ。 (だるーい・・・) 昨夜は大広間の大宴会にて大いに酔い潰れてしまったのだ。 せっかく気分を改めようと井戸に顔を洗いにきたというのに、足腰がふらついてろくに真っ直ぐにも立てない。 まあ早起きをした、というよりは気分が悪くて目が覚めてしまったという方が正しいだろう。 朝の清浄な空気がぐらぐらと揺れている。 (わーい、オレかっこわるい・・・) 今日は非番でよかったー、と井戸につかまりながらようやく立ち上がったそのとき。 「あのー、藤堂先生ー、あのー?お客様ですよー」 機嫌も気分も悪そうな藤堂に、本日の門衛の隊士が非常に遠慮がちに話しかけた。 「客?オレにかな?」 「あ、いえ・・・先生がたまたま近くにおられましたので、ご報告しようと・・新入隊士の方がみえているのですが、どうすればよいのでし「バカタレ!!!今すぐ土方さんに報告してこい!!!!!!!!」 バカ、と藤堂はもう一度内心でつぶやくと思い切り顔に水をぶちまけた。 急な出来事と、冷水の刺激にいきなり頭が冴える。 (新入隊士・・・?こんな時期に??) しっかりと袴の紐を結び直すと、いまだにおどおどとしている隊士に手拭いを投げつける。 酔っ払いの姿は影をひそめ、今ここいるのは最年少幹部、八番隊組長の藤堂平助てあった。 「早く土方さんのところにいけって言ってるだろ!新入隊士はオレが相手をする!!!」 隊士が返事をしたとき、すでに藤堂の姿はそこにはなかった。
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