プロローグ

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 神誓王国メルテシオン、黒鍵騎士団団長ガルン・ヴァーミリオン。  地獄の底から帰還した英雄は、勇者と呼ぶには程遠い黒い悪鬼のような姿だったと言われている。  十万人の死者を出した“冥夢の幻域”から帰還した唯一の生き残り。  数少ない目撃者が、畏怖と恐怖から付いた綽名が“黒き戦鬼”。 “黒き戦鬼”ガルン・ヴァーミリオン。  その“黒き戦鬼”により制圧された場所が終夜の帝国シュバルツエン・パシェッエンであり、第四王女の聖骸が眠る場所と目される場所もそこであった。  その夜の王国に次々と阿鼻叫喚が巻き起こっている。 「温い。温いは! この程度の連中が、良くも我等の居城を盗み取ったものよ! 許せぬ、許せぬな! 我等の聖域をこやつらの血で紅く染めてやろうぞ!」  都の外周壁正門を正面から突き破り、意気揚々と進軍して来たのは僅か二十人足らずの鎧を纏った人間達であった。  否、人間では無い。  人の姿をしているが、彼らは人間とは異なる種族“吸血種”である。  その先陣を進む黄金の鎧と赤いマントを翻し、首無しのチャリオットに乗る偉丈夫が高笑いを上げていた。  それを阻むように展開する赤い鎧の騎士の一人が声を上げる。 「陣形を組め!!奴らは人間では無いぞ! 魔道士団はまだか!」  そう声を荒げたのは、騎士にしては珍しい凛々しい女性であった。
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