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「ほう。狂信者の国の人間にしては、珍しく上玉の獲物よ」
黄金の吸血鬼はほくそ笑むと、いきなりチャリオットから跳躍した。
打ち上げられた砲弾のように飛び出すと、同じく砲弾のように地面に着地する。
降り立った地面は陥没し、隕石の落下のような衝撃が大地と大気に伝播して行く。
周りの騎士が爆風で吹き飛ぶ中、赤い女騎士は手にした盾を前面に押し出し、剣を地面に刺してやり過ごす。
爆風が止むと、いきなり金色の鎧が目の前にあった。
驚きで目を見張ったが、直ぐさま攻撃に移ったのは熟練の成せる技か。
撃ち込まれた鋭い突きは、されど黄金の手で軽く掴まれる。
だが、舌打ちしてすぐさま握り手を回転させた。
ガントレットをはめているとは言え、手の平のハンドアーマーの強度は他の箇所よりは低い筈だ。
しかし、捩ったはずの刃先はびくともしない。
女騎士は直ぐさま盾で殴りつけた。
その盾も軽く受け止められる。
「貧弱。貧弱だな~人間?」
男は邪悪な笑みを浮かべると、剣と盾を素手で捩砕いた。
有り得ない悪夢の光景に女騎士の顔が青ざめる。
吸血鬼の腕力は人間のそれを遥かに上回る。
それでも怯まないのは神の国に使える人間の意地か。
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