プロローグ

4/20
前へ
/1894ページ
次へ
「ほう。狂信者の国の人間にしては、珍しく上玉の獲物よ」  黄金の吸血鬼はほくそ笑むと、いきなりチャリオットから跳躍した。  打ち上げられた砲弾のように飛び出すと、同じく砲弾のように地面に着地する。  降り立った地面は陥没し、隕石の落下のような衝撃が大地と大気に伝播して行く。  周りの騎士が爆風で吹き飛ぶ中、赤い女騎士は手にした盾を前面に押し出し、剣を地面に刺してやり過ごす。  爆風が止むと、いきなり金色の鎧が目の前にあった。  驚きで目を見張ったが、直ぐさま攻撃に移ったのは熟練の成せる技か。  撃ち込まれた鋭い突きは、されど黄金の手で軽く掴まれる。  だが、舌打ちしてすぐさま握り手を回転させた。  ガントレットをはめているとは言え、手の平のハンドアーマーの強度は他の箇所よりは低い筈だ。  しかし、捩ったはずの刃先はびくともしない。  女騎士は直ぐさま盾で殴りつけた。  その盾も軽く受け止められる。 「貧弱。貧弱だな~人間?」  男は邪悪な笑みを浮かべると、剣と盾を素手で捩砕いた。  有り得ない悪夢の光景に女騎士の顔が青ざめる。  吸血鬼の腕力は人間のそれを遥かに上回る。  それでも怯まないのは神の国に使える人間の意地か。
/1894ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4189人が本棚に入れています
本棚に追加