プロローグ

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 女騎士は素早く腰の後に装備した短刀を引き抜く。 「止めよ」  そう言いながら男の瞳が爛々と赤く輝いた。  女騎士の動きが不自然に止まる。  男は悦に入って笑うと、女騎士の首周りの鎧を引きちぎり、その首筋に噛み付いた。  女騎士の身体が小刻みに震える。  苦しみよりは快楽に近い表情の顔から、愉悦の声が上がって行く。  男の顔が歓喜から微妙に渋い顔に変わる。  男はゆっくりと女の首筋から顔を離すと、遠巻きにしている騎士達に女をゴミのように放り投げた。  鎧の重さなど微塵も感じさせない、紙袋を投げるような手軽さである。 「ん~。処女ではないとはとんだ神の国の騎士よ。神に命を捧げたのならば処女を突き通して貰いたいものよ」  男は急に不機嫌な顔に豹変した。  威圧感が一気に膨れ上がる。 「下賎な化け物め!」  女騎士を何とか受け止めた騎士が怒りに震える。  処女を奪った相手はこの騎士であった。 「トール?」  女の口から声が漏れる。  それは、その騎士の名前であろう。 「安心しろセレーネ! こいつは俺が叩き斬る! お前はゆっくり休ん……」  男はそこで言葉を止めた。  首筋に走る痛みに頬を引き攣らせる。 抱えていた女騎士がいつの間にか首筋に噛み付いている事態を、男は不思議そうに眺めた。
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