プロローグ

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    ◆  ◆  ◆ 「ゴメンなぁ、ユウヤ。 まさか廊下の死角に居るとは思ってなかったんだよ。マジゴメン!」 「あははは、大丈夫、気にしないで。ぼくは何ともないから」 「でもよぉ……アイツ、お前が委員長だからってキツい説教しやがって」  そう、何故か実行犯の友人ではなく、同室の九条だけが厳しく叱られた。お前は委員長だろうが、やれ弛んどる等、言われ放題だった。  もし、レクリエーションの時間が迫ってなかったら、あと小一時間は続いてただろう。 「ぼくの事なんかより、これから始まるレクを楽しもうよ。前から楽しみにしてたでしょ?」 「あ~~、そうだそうだ。この時の為に汗水流してダンス練習までしたんだ。 ーー全てはこの日のために!!」  眼をメラメラと燃やす友人。彼が息を巻くのには訳がある。船内の上部にあるダンスホールで全クラス合同のダンスが行われるのだ。  普通だったら「面倒だ」と言う事だが、このレクリエーションにはあるジンクスが存在していた。  レクリエーションでは、最初だけはダンスの相手はくじ引きで決め、その後、優秀な一組を選ぶ。  さて、肝心のジンクスだが、その最初の一曲の中で先生方による独断と偏見で選ばれた男女はカップルに成れる、と言われている。 「絶対に俺は同じクラスの玲奈ちゃんと踊り、そして……グフフッ」 (そんな上手く行くとは思えないけどなぁ……)  クラスの皆と合流した九条は階段を降りながら、友人に気付かれる事なく溜め息をついた。
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