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☆ ☆ ☆
ワシは、減塩醤油を手に入れ、帰参したばかりの木下藤吉郎に、
下呂温泉行きの手配を命じた。
「殿、私にお任せください。藤吉郎は旅から戻ったばかりのコトですし。
ぜひ、この蘭丸に」
森蘭丸の言葉に、
藤吉郎は、こっそりつぶやく。
(おやおや。珍しく、お優しい。蘭丸様とは思えぬ言葉)
藤吉郎は、貧しい農民出の新参者だが、
なぜか主君の織田信長に重用されるのを、
気に入らない家臣連は多々おり、
森蘭丸は、柴田勝家・明智光秀に続く、
イビリ頭だったのだ。
「よい。下世話な役目は、サルに任せよ」
森蘭丸の申し出を、羽をのばしたいワシは、一蹴した。
「…」
森蘭丸は、無言で、ワシを見つめた。
まさにヘビのような目で(-"-)
この森蘭丸は、美少女のように美しい容姿をしているが、
ヘビのような目と空気、それに見合う性質を持っていた。
織田家の影のフィクサーとも囁かれ、怖れられておるらしい。
極めて陰湿な策謀家。
陰湿な愛が、主君たるこの信長に向けられておる。
揺るがぬ忠義心なのだが、
愛が時々、重いのじゃ…。
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