第15章

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「楽屋、戻らないの?」 「幸に集中力が足りないって突っ込まれたんで……。もう少ししたら戻ります。」 「相変わらず厳しいね~、幸は。そういうところが小山君と馬が合うんだろうね。」 幸は芝居のことになると厳しい。 虎太朗君にダメ出しをする幸の様子が浮かんでクスリと笑う。 二人で乱れた椅子を整えていると、不意に虎太朗君が私に問い掛けた。 「……あずささんは、また舞台に立ちたいって思わないんですか?」 きっと、虎太朗君にとっては何気ない会話。 その問い掛けが私の心を射抜くだけの威力を持つことに、彼は気付いていない。 「……あずささん?」 遠慮がちに掛けられた声に我に返る。 「あー、ごめんなさいね。ちょっとボォッとしてた。」 「……余計なこと聞いちゃいましたか?」 「ううん、大丈夫よ。」 大丈夫。 その言葉は意味を伴わなくて。 私は、そろそろ限界なのかも知れない。 .
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