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虎太朗君が手伝ってくれたお陰で作業は捗り、綺麗に整えられた客席。
「疲れてるのにありがとう。助かったわ。」
「平気ですよ。また何か手伝うことがあれば呼んで下さい。」
……私は、どうしたのだろう。
「…………さっきの話、ね。役者に未練がない訳じゃないの。」
「……。」
「でも、『スピーク・イージー』に居る限り、私は舞台には立てないのよ。
ここに必要なのは、役者としての野村あずさではないから。」
楽屋に戻ろうとする虎太朗君を呼び止めてまで、何を伝えようというのだろう。
明らかに戸惑っている虎太朗君。
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