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「こっちはバタついてて早速本題で申し訳ない。」
先輩である涌井海里(わくいかいり)さんからの電話は、大抵が呑みの誘いだ。
明らかにいつもとは違う切り出し方。
「あずさ、小山(こやま)のこと覚えてるか?」
私、野村あずさ(のむらあずさ)は、唐突な振りに付いていけず、眉をひそめる。
小山君は同じ大学に通っていた2つ後輩。
学部は違ったけど、私も彼も『アナザーフェイス』という学生劇団に所属していた。
私が大学に通っていたのは既に一年前の話。
卒業してから彼との接点はない。
ちなみに涌井さんも同じ劇団に居た先輩で、私の3つ上にあたる。
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