第1章

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「はい、覚えてますよ。『アナザーフェイス』に居た時に、一度だけ一緒に公演した程度ですけど。」 電話の向こうの涌井さんは、うんと頷く。 『近々、小山から電話があるから。』 「……はい?」 『俺があずさの番号を教えた。』 「……事後報告。」 『全く繋がりがない訳じゃないし、ブツブツ言うなよ。』 こういうあっけらかんとした性格は、涌井さんの長所でもあり……、短所でもある。 私は口元から携帯を離して、彼に聞こえないように溜め息を吐いた。 .
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