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「いただきます」
「…いただきます」
何事もなかった顔して手を揃える相手を見ていると複雑で
「お前…働き過ぎなんじゃね…?」
気もそぞろに鍋を突きぼやいてみると
「ああ、来年。あと一ヶ月ほどで辞めるからな」
「……………はあ…?」
涼しい顔して肉ばかり取る相手の発言にピタッとその動きも止まる。
「…辞める…。おい、今、辞めるっつったか?」
そんな事…聞いてない…。ああ…やっぱり今日会うんじゃなかった。
「ああ、言った」
「………お前なぁ…」
多分。恐かったのは自分への言い訳で…。
(たぶん、俺は期待してたんだ…)
芳野は何でも自分で決められるし、人に相談してる所なんて見た事もない。常に冷静な、そんな男が…『恋人』になった自分に…どんな姿を見せてくれるのか…。
…でも。
「辞めてどーすんの…事業でも立ち上げるわけ…?」
そんな事
「ああ、既に不動産も決めてある」
「………そうかよ」
ただの願望だった。
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