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(は……?)
芳野ほどではないが、有賀自身もそう頭の回転が悪い方でもない。
「お、前………今…」
それでも目の前で表情ひとつ変えぬ相手の顔を見ていると、もしや聞き間違いかと疑う心が集まりそうな熱をごまかすのに
「さすがに海外から簡単にお前に会いに来れない」
同じ発言が面倒とばかりに進める相手はある意味容赦がない。
「………え、あ…」
(…う……わっ…)
有賀は思わずカッと熱くなる顔を隠すように下を向き口を覆った。
「有賀」
「う…は、はい」
(…何故俺敬語…!)
チラリと見れば、今だに口を覆い顔を赤くする相手を前にしても表情ひとつ変える事のない芳野が目を細めこちらを見て
「話」
「あ…?」
自分の箸を持ち直し
「話。今のも含め食後でいいか?」
疑問形にしながらも早速中断した食事を開始するのを見て
「え………あ、ああ………うん…」
…話?今のを含めて?
全く想像つかない事に戸惑いつつも
「ちょっ、お前肉ばっか食うなし!」
「……………」
「無視かよっ」
どろどろになりそうだった感情を、ふわふわと胸の奥を擽る感覚にしてくれた相手に自然に笑える事が嬉しかった。
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