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「おい」
「んあ…?」
(あ…?俺寝てたのか?)
二人とも普段忙しい時間の中で食事する事が多い為、私生活でも食べるスピードは人より早い。どうやら胃が膨れると同時に暖かいコタツという最強の組み合わせでいつの間にか眠っていたらしい。
「あ…」
心地好いけだるさを感じながらコタツに寄り掛かる上半身を起こせば、芳野だろう。綺麗に片付けてあった。
「わりっ…起こせばよかったのに…」
時間を見れば新しい年まで5分と少し。さほど寝てはいなかったらしい。
「今、起こそうと思っていた」
そう言って目の前に降ろされたのはビールの缶とグラス。
「あれ?ツマミは?」
せめてもとふたつ分のグラスに琥珀色の液体を注ぐが、せっかくのチーズは疎か、ツマミらしい物はひとつもない。
「必要ない」
「…?」
座り直す相手の意味のわからない言葉に首を傾げた。
「………ハァ」
「はあ…?」
喧嘩売ってんのかコノヤロウ
何故ここでため息だよ。
「…上手くいかないな」
「…芳野?」
前髪を乱暴にかき上げ、自分のグラスを持ち上がる相手のその珍しい雰囲気を感じ、怪訝な顔をしてしまう。
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