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「………」
いくら睨みつけても、鏡に写るのはどっかから見ても可愛らしい女の子にはならない。
そんな事はわかっている。わかってはいるんだが…
「………やっべ」
こんなプレッシャーは高校受験でさえ感じなかった。
脈打つ鼓動で頭の欠陥が切れたりしないだろうか?
弱まるどころか、強くなる一方の鼓動の早さが余計に不安を掻き立てて思う事は、ただひとつ
「………マジで逃げたい」
気は弱い方じゃないはずだ。いや、むしろ強い方だと思っていたが、どうやらそれは思い込みだったらしい。
「………現実、なんだよな?」
ひとり鏡の前で自問自答している有賀(ありが)は、それがどんなに不審な姿なのかよりも、頭を過ぎる不安でいっぱいなのだ
「どうしよう…」
それは、もうすぐ一人暮らしの有賀の部屋に来る来訪者。
「………どうしよ」
長年の友人であり。
「………うっ…」
一週間前に出来たばかりの恋人。
「………居留守、…ダメか…」
有賀はその存在に会うのが不安でしょうがなかった。
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