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「風呂」
「ああ、…用意だけしとく」
お互いの部屋に着替えは常備してるぐらいだ。慣れた様子で浴室に向かう後ろ姿を見送り、有賀は受け取った買物袋を手に台所に。
何だ…わりと…普通。だよな?
プリンや食後のつまみなのか少し高そうなチーズを冷蔵庫に分けながら、ニコリともしない端正な顔を思い浮かべた。
何かこう…会いたかったとか、元気だったかとか…。
元から芳野があまり感情を表に出すタイプではないのはわかってはいるが…我ながら現金なもので、自分が言うのは躊躇うくせに相手から何かしらのアクションがないとそれはそれで物足りなさのようなものを感じるものだ。
…まあ、…友達の期間の方が長いわけだし…。
出来たばかりの恋人に対して感じる、照れやときめきがあるのが稀なのかも知れない。
そう考えると変に意識した方が負けの気がする。
「…鍋、ね、鍋」
そう思いながらも。必要な物を男の料理らしく大雑把に切る有賀の頭の中から端正な顔を持つ男の顔が消える事はなかった。
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