この距離で…

7/16
前へ
/16ページ
次へ
結局。落ち着かない心境のまま数年前から愛用しているコタツの上に簡易コンロを置き、用意した鍋を置いた頃にはそこだけが別世界のブラウン管の中で年越しまで1時間を切った事を告げ。 「はい、それは…」 古いアパートの床を歩く音に、どうやらこんな時間まで仕事の連絡らしい声が聞こえた。 …どんだけ忙しいんだ。 それだけ優秀で頼られてるんだと思うと、同じ男として対抗意識に似た気持ちと…親友、として誇らしくも思う気持ちが混ざって実に複雑だ。 まだ続くような様子に、何気なく振り返り 「………!」 振り返るんじゃなかったと後悔したがもう遅い。 「わかりました」 それは、振り返った先。思った以上に近い距離で話す芳野が。 上半身に何も身につけていなかったからだ。 確かに室内は寒がりな有賀の為に、暖房を高めにしてあるが…。 「…っ………」 それ以上に、高まるような熱に有賀は「…やっぱり居留守を使うんだった」ともう後悔をしていた。 .
/16ページ

最初のコメントを投稿しよう!

80人が本棚に入れています
本棚に追加