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ももというマリオネットは、糸が切れてないというのに勝手に踊る。
僕は操者として、そのマリオネットをきちんとした形に修正しながら野放しにした。
「■■■さんっ! もう……ゆるしてっ……い、いっ……」
聞きたくない名前。
思わず動きを止めずに彼女の頬を打つ。
「いっ! 」
叩かれたことに我に返る彼女。手首を押さえられてなければ口許を押さえるだろう。
「もも、その名前、誰が呼んでいいって言った? 」
冷たい声、彼女の上気した頬の色が一気に醒める。
「あ、あ、いや、そ、そのっ……」
慌てたように言葉を紡ごうとする彼女。
だが、僕はそれを許さない。
「……君は許されたと思ってる? 」
フルフルと首を横に振る。僕は、頷いて、彼女の手の拘束をほどいた。
「あの時から僕は君を憎んでる。でも、君は、図太い神経を持つ君は、僕に言ったよね? 僕を好きだと」
あの時の真剣なももの表情。 何でもします。その言葉に僕はどこまで出来るのか試そうと思った。
「そして、君は今、人じゃなくモノとして扱われてる。 お仕置きと称した折檻に、淫靡な行為。 だからといって、君を許したわけでも、愛したわけでもない」
彼女の瞳が揺れる。動揺してるのか。
愚かだ。僕は元より彼女のことなどこれっぽっちも愛していないのだから。
ただのでき損ないのラブ・ドールにしか過ぎない。
「解るだろう? 君は僕の欲望を満たすだけの道具に過ぎないんだよ? 」
緩やかに甘い口調で紡ぐわりには吐き出す言葉の辛辣さ。
優しく微笑み、彼女の乱れた髪を鋤く僕は恋人のように見えるかもしれない。
現に彼女は触れられる感触に恍惚な表情を浮かべてる。
罪人は己の罪を時に忘れる。
「だから、君は永遠に僕だけの玩具なんだから」
聞きようによっちゃ愛の囁きに聞こえるだろう。
だが、僕にとっては、彼女に吐く呪詛なのだ。
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