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「……■■さん……」
切なげにに呼ばれ、僕の心も揺れる。
乱暴に扱っても決して彼女は、僕を嫌わない。
それどころか、完璧な従順を示す。
「ごめん……なさい、ごめん……なさい」
ただ、ただ、謝る彼女。
僕は、唇を重ねる。ただ、触れるだけの接吻。
唇を離すと、潤んだ瞳で僕を見る。
だから、僕は残酷で甘美な言葉を突き付けた。
「赦さないよ 僕は絶対に 」
赦したとき、僕は彼女を手放さなければならない。
それだけは、避けたい。
「はい、赦さないで 」
その言葉は罰を甘受するだけではなく、僕を独占したいだけの言葉。
だから、僕はそれに応える。
「赦さない、絶対に赦さない 」
憎しみは時に愛となる。
愛は時に憎しみとなる。
だから、僕は彼女を愛しながら憎んでいるのか。
憎みながら愛しているのか。
「お仕置きして……ください 」
求めるのは残酷で冷酷な痛み。
与えるのは甘美で美麗な罰。
白い布団が汗と体液でぐっしょりと濡れていた。
僕は彼女の首に手をかける。
吐息しか聞こえなくなったこの空間。
月明かりが照らした彼女の蒼白い顔。
「そのまま、絞めますか? 」
君に、最高で最低な罰を与えよう。
それが、僕にとっての甘やかな印。
「もし、そうだって言ったらどうする? 」
幻想的な光は時に人を狂わせる。
だから、僕は狂っているのだろう。
あんなにも憎んでいたももを綺麗だと思ってしまっているのだから。
「じゃあ、思いきり、絞めてください。もう、痛みも苦しみも解き放つように 」
優しい口調で紡がれる哀しい言の葉。
僕に幕を閉めることはできるのだろうか。
細い首に手をかけて。
力を込める。
ももは僕の手を掴み。
早く終わらせるように。
首に押し付ける。
首を閉めてる間、彼女は酸素を求めるように口を動かした。
でも、それは僕に向けた最期の遺言。
「■■■さん、あ、い、し、て、ま、す 」
それを理解したとき、僕の中に言い様のない悔しさが込み上げてきた。
だから、余計に力を入れた。
ピクリ、ピクリ、身体を震わせて、生命の活動を、音を終わらせるももこ。
僕は手を離し、腕の脈をとる。案の定、彼女は本物のドールと化した。
まだ、暖かみのある頬に触れる。
その表情には苦悶の色は認められず安らかな表情を浮かべていた。
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