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出会いは、ネットだった。 SNSで出会った僕ら。 彼女は切実に〝普通〟を求めていた。 周りに合わせすぎて自分の息の仕方まで忘れていたのだ。 彼女は常に問い続けてた。 普通ってなに? みんな一緒じゃなきゃダメなの? 個性ってなに? 個性を活かしたらみんな離れてく。 だったら、〝みんな〟が普通なのか。 私は〝みんな〟に合わせなきゃいけない。 その言葉に僕は窮屈な水槽を泳がされてるクジラを思い出した。 窮屈な水槽で泳いでる不器用なクジラ。 目に涙を浮かべながら、必死で周りに合わせ泳ぎ続ける。 でも、不自然さと窮屈さはクジラを追い詰めていくのだ。 そんな陳腐なストーリーを思いつき思わず笑ってしまった。 だからか。 僕は彼女に言った。 「よく、頑張ったね、もも 」 HNがももこだった。 だから、もも。 電話の向こうで嗚咽を洩らす彼女に僕は言葉を紡ぐ。 「偉かったね、もも。ずっと、ずっと、頑張ってきたんだね」 ゆっくりとした、眠たげな声だったと思う。 不思議の国のアリスの眠り鼠を思い出してほしい。 「ふぇ?」 一旦泣き止んだ彼女に畳み掛けるように言う。 「もう、頑張んなくていいよー? 疲れたね。大丈夫だよ、君は充分普通だから」 受話器の向こうに座って泣き腫らした目をしたももこを想像してみると自然と頬が緩んだ。
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