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きっと、短絡的な人はそれを恋だの愛だの騒ぐのだろう。
でも、違う。
顔も見えないし、会える距離にもいない。ただ、知ってることも少なすぎる。
何より僕はチャットでの恋愛は嫌いだ。
裏切っても裏切られても、所詮はバーチャルの言葉で片付けられてしまう。
だからか。
彼女のことは少し手のかかる妹のような存在だった。
尻尾を振ってお兄ちゃんと飛び付いてくるような……。
そんな理由から彼女には恋愛感情など微塵も持っていない。
でも……。
近くなりすぎた距離と友人を越えてしまった親しさは時に恋愛感情を引き起こさせるスパイスとなってしまった。
「■■■さん、好きです」
いつものように電話をしてる最中、唐突に彼女は言った。
まだ、本名を呼ばせていたときだったから。
僕は、戸惑った。
真っ直ぐな彼女の声。
どこか甘えたそうな口調。
求めるのは甘い蜜?
「なにが? 」
解らなかったフリをする。
それが彼女にとって一番、最良で最適な道。
こんな醜男に恋愛感情など抱いてはいけない。
パソコンをして、食べたいときに食べ、寝たいときに寝た不健康生活の賜物のこの肉体に。
定職にもつかずプラプラとしてる日々。
病気にかこつけて、怠惰な生活を送ってる僕に。
恋をすることなどできない。
だけど、彼女は食い下がる。
「■■■さんが。好きなんです。私はあなたが――」
「僕も好きだよ? もものこと。 可愛い妹みたいで 」
被せた言葉はどこぞのラブコメに出てくる主人公のような言葉。
とことん気づかぬフリをしてしまおう。
それが、今の僕に課せられた使命。
「……あ、はい。私も……です 」
この関係を壊したくないのだろう。
どこか残念そうに吐いた言葉。
それに安堵する自分。
「そうだよね。それでね、もも――」
いつもの会話を続け、眠くなれば通話を切る。
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