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そんな時、僕は些細なことで、チャットを始めたころから仲のよかったTAKERUという男と喧嘩してしまった。
勿論、チャット上でだ。
些細なことだった。
何ともないことのはずだった。
だけれども。
雨と雷が混じる不気味な晩。
BAD・ENDを奏でる喜劇が幕を開けた。
それは、傍から見ればとんだショータイムだっただろう。
野次馬には大ご馳走だ。
「■■は女をたぶらかした挙げ句、ゴミのように棄てた 」
根も葉もない噂。
それに踊らされる名だけの友人達。
彼女は違うと思った。
いや、思いたかった。
だけれども。
僕は彼から聞いてしまった。
「アイツはお前から離れたがってるぜ? あいつもお前のこと キタナイってさ」
僕の中で何かが切れる音がした。
「ももがそんなこと……」
そう言いながら、心のどこかでは、肯定していた部分があった。
彼女もまた、他の人と同じ。
噂に踊らされ、マリオネットのように、あたふたとしているのだろう。
そう、考えたとき、僕は笑い出したくなってしまった。
滑稽だ。
とても、滑稽だ。
「そっか。そうなんだ。ありがとー。教えてくれて 」
穏やかな僕の声にTAKERUは楽しそうに笑う。
その笑い声はどんな雑音よりも不快だったことを強く覚えている。
それからの僕は、ももこを無視した。
アドレスも番号も変え。
チャットで話しかけるももこを悉く、無視。
最初は必死に、僕に話しかけるのだが、最後の方になると、無言になり。
死んだようにだまりこむ。
「■■。ひどい子もいるよね? 」
仲のいい、ココア。
彼女だけは裏切らない。
何せ、彼女は僕の親友なのだ。
女友達なのに、性的な雰囲気を漂わせず、こちらが楽しくなるように精一杯気配りをしてくれる。
気遣いが大人の女性のそれなのだ。
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