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「どうし……ましたか? 」
鈴を転がすような、という、陳腐な例えしか浮かばない。
「もも……ずっと、傍にいていい? 」
その質問に彼女は頬を緩めて頷いた。
安心した。
僕にはもう彼女しかいない。
「よかった」
「また……してください」
布団から出た彼女の肢体は、赤い痣で彩られている。これは、僕がつけた印。
「痛くないの? 」
陳腐なことを聞いてると思いながら僕は聞く。
彼女は自分の痣をどこか嬉しそうに撫でながら首を振った。
「痛い、よりも、嬉しいです。あなたのお役に立てるなんて」
裸に近い服装で僕にしなだれかかる彼女。
清潔な石鹸の香りがした。
「じゃ、うつ伏せになって」
素肌に白のYシャツは最早行為へと誘ってるようにしか見えない。
でも、僕は彼女に手を出したことはあまりない。
求めれば応えるだろうがそれでは彼女の思うつぼである。
「……してください」
肉感的な女体に誘われ、僕は服の上から彼女の背中を叩いた。
初めは戯れるように、優しく。
背中に降りる手にはまだ力は込めない。
しばらく遊び終わったら、今度は力を込めて叩く。
パシリ
パシリ
パシリ
パシリ
パシリ
パシリ
身悶えする彼女の腰に跨がり背中だけを叩き続ける。
傍から見れば、そういう趣味だと思われるだろう。
だが、違う。
これは、お仕置き、なのだ。
彼女への。
そして、己への。
パシリ
パシリ
パシリ
パシリ
パシリ
パシリ
パシリ
パシリ
パシリ
パシリ
違う場所、同じ場所、交互に叩く。
時折、赦して、と叫ぶ彼女。それでも、もっと、と求める。
矛盾した訴え。だが、理由は解らなくない。
暫く背中を集中攻撃すると、うっすらと赤い痣が出始める。
赦さない印。
永遠に僕は彼女を赦さない。
「今度は仰向けになろうか? 」
自分でもおぞましくなるくらいの優しく甘い声。
少し高めでゆっくりとした声は彼女のお気に入りらしい。
こくん。素直に頷くと、ゆっくりと仰向けになる。
泣いたのか。涙の痕がうっすら残っていた。
僕は気付かぬフリをして、今度は、古いパソコンが乗っているちゃぶ台から、煙草とライターを取る。
基本的に銘柄にこだわりはない。
今も安くて名前も有名ではない煙草を吸っている。
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