やおよろず2

1.冒頭

あなたは、催眠術をご存知でしょう。
5円玉を紐に吊るして、目の前で軽く左右に振って、

あなたはだんだん眠くなる
あなたはだんだん眠くなー……る

なんて、古典的な方法では術になんか誰もかかりませんね。
催眠術にも作法がありますから。
正しい方法で、正しい場所で、正しい手順を踏んで行わなければなりません。

満月か、新月の夜が好ましいでしょう。
あるいはその間、いわゆる上弦の月と下弦の月の頃も有効です。
効果の上下はありますが、三日月など、月に名前が付いた夜でも構いません。

リラックスのできる場所が、術にかかりやすいかと思われます。
できれば自宅で、誰からも邪魔の入らない自室で行いましょう。
ベッドやソファの上で、力を抜いても構わない、術にかからずとも寝てしまっても問題のない場所がベストです。

まずはリラックス。
催眠術にかけるぞ！なんて気負わないで、まあ、かからなくてもいいや、なんて軽い気持ちでいてください。

深呼吸が効果的です。
深く、鼻から吸って……深く、口から吐く。
吸って……少し止めて、口から長く……吐く。
鼻から……1,2,3……少し止めて……4……口から……5,6,7,8,9,10……

深呼吸を繰り返していると、だんだん力が抜けてきます。
右手からスーっと力が抜けていく。
左手から……右足から……左足から……
スーっと力が抜けていく。

力が抜けていくと、だんだん手足が暖かくなってきます。
利き手や利き足だと、特に感じることができるでしょう。
ぽかぽか、ぽかぽか
暖かくなっていく。