第1章 義兄の結婚と義兄の彼女

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Ⅰ すぐ後ろに阿蘇の山を控えた緑豊かな光景を、空から眺めるのも3回目。 またまたこの地に降り立ってきました。何だか第二のふるさとに思えてきた熊本。 お正月休みも終って、人もまばらなゆったりとした空港通路を、ありこさんとスーツケースを引きずって歩く。 今回の旅の目的は…。 「さむっ」 空港のゲートを過ぎて、ありこさんはぶるっと肩を震わせた。 真っ白いショート丈のPコートに、下は黒の半そでワンピに、薔薇の柄のタイツ。 いつも思うけど。 「も少し、あったかいカッコ、してくればいいのに…」 「結婚式なんだから、上から下まで肌覆うわけにも行かねえだろっ」 そんなものなの? 僕にはよくわからない拘りだけど。 そう。ありこさんの言う通り。今日はこれから、ありこさんのすぐ上のお兄さん逸樹さんと、和菓子屋さんの一人娘、夜映さんの結婚式。
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