8人が本棚に入れています
本棚に追加
ジュノ・グラットン――ギルド最強と名高い彼は、とある地方の農村にて生を受けた。
両親・祖父母・六人の兄妹達……そんな大家族であったグラットン家の人々は、常に飢えとの戦いを強いられていた。
生業としていた農業だけでは食べて行けず、祖父が狩りに出掛け、父親が都会に出稼ぎに出る事で、その後産まれた三人の妹達もどうにか育てる事が出来た。
しかし、それでも生活に困窮していた事に変わりは無く、ジュノを含め合計九人の子ども達は物心のつく頃から自然と家族の手伝いをしてきた。
他の兄妹達が農業を手伝ったり近隣の住民を手伝い報酬を得たりして家族を手助けする中、ジュノはただ一人祖父と共に狩りへ行く事を選択した。
当時四歳だった彼を、両親や兄妹達は止めた。
周囲に危険な生き物は居ないとはいえ、祖父が狩りに出かけるのは、一時とはいえギルドに所属していた経験者だからこそなのだ。
しかし、そんな家族の反対を止めたのは祖父だった。
『こいつは今から鍛えた方が良い。それだけの素質を持ってる』
今は自分が動けるから良いものの、いつかは狩りに出られなくなる日が来る。
家族は気付いていないが、村の周囲に危険な生き物が居ないのは祖父が定期的に討伐していたからだ。
年々強さを増している危険な生物――魔物と呼ばれるその生物に敵わなくなるのも時間の問題である。
このままでは今の平穏は失われてしまう。
それを理解している祖父は、だからこそ今から鍛えて家族を守れるように託しておこうと考えたのだ。
ただ一人、自分が周囲の危険な生き物を討伐している事に気付いていたジュノに。
.
最初のコメントを投稿しよう!