もう、動かない君

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ジュノの腕の中、りこの体温は徐々に下がっていった。 もはや何も映る事の無い、光を無くした黒い目が、りこの命の灯火が消えた事を物語っている。 “――ジュノ” 今にも聞こえてきそうなりこの声。 しかし、ジュノの名を紡いでいた唇はすっかり色を無くし、その端からは赤い血が流れている。 ぴくりとも動かないりこを腕に抱き、ジュノはぼんやりと考えていた。 “何故、りこは動かないのか?” りこの身体を見てみると、胸の辺り――ちょうど心臓がある場所が真っ赤に染まっていた。 そこで、ジュノはそれが原因でりこが動かないのだと思い当たる。 りこが着ている服を脱がし、どうなっているのかジュノは見た。 「りこ……」 りこの身体を貫く傷。 そこから流れ出る大量の血に、ジュノは思わずりこの名を呟く。 どうして、りこの身体にそんな傷がついているのか。 己の身体にある多くの傷も気に止めず、ジュノはそんな事を頭で考えていた。 共に旅をしていた仲間が近くに寄って来た事にも気付かず。 .
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