8人が本棚に入れています
本棚に追加
ジュノの腕の中、りこの体温は徐々に下がっていった。
もはや何も映る事の無い、光を無くした黒い目が、りこの命の灯火が消えた事を物語っている。
“――ジュノ”
今にも聞こえてきそうなりこの声。
しかし、ジュノの名を紡いでいた唇はすっかり色を無くし、その端からは赤い血が流れている。
ぴくりとも動かないりこを腕に抱き、ジュノはぼんやりと考えていた。
“何故、りこは動かないのか?”
りこの身体を見てみると、胸の辺り――ちょうど心臓がある場所が真っ赤に染まっていた。
そこで、ジュノはそれが原因でりこが動かないのだと思い当たる。
りこが着ている服を脱がし、どうなっているのかジュノは見た。
「りこ……」
りこの身体を貫く傷。
そこから流れ出る大量の血に、ジュノは思わずりこの名を呟く。
どうして、りこの身体にそんな傷がついているのか。
己の身体にある多くの傷も気に止めず、ジュノはそんな事を頭で考えていた。
共に旅をしていた仲間が近くに寄って来た事にも気付かず。
.
最初のコメントを投稿しよう!