一章

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何故かはわからないが時々アンナ姉さんは俺に婚姻届を出してはクネクネするといった謎の行動をとる時がある。 普段しっかりしているだけにこういう行動を見ると意外に思ってしまう。 「アンナ姉さん、冗談は程ほどにして冒険家になるための、契約書を出して?」 いまだにクネクネと妄想の、世界に浸っていたアンナはヒューゴの言葉に残念そうにしながら棚の奥から一枚の羊皮紙を持ってくる。 「もう、冗談じゃないのにっ・・・これが冒険家の誓約書になるわ。」 まだ何かブツブツと言っていたがよく聞き取れなかった。 とりあえず出された羊皮紙に名前を書くとアンナ姉さんはくるくると羊皮紙を丸めて棚の奥にしまった。 「おめでとうヒューゴ、これであなたも冒険家よ。だからって無理しちゃだめよ?」 アンナは心配と祝福が混じったような複雑な顔をしている。 俺はそれに胸を張って答えよう。 「大丈夫、親父みたいにはならないよ。残された人の気持ちは分かっているつもりだから。」 俺の言葉を聞いたアンナ姉さんは少し悲しむ顔をして下をむいてしまった。 「アンナ姉さん、俺は大丈夫だから笑って?アンナ姉さんは笑っている顔が一番可愛いんだ。」 と今俺が出来る最高の笑顔で言うと、アンナ姉さんはなぜだか顔を更に下に向けた。 「あ、あれ?アンナ姉さんどうしたの?もしかして体の具合が悪いの?」 俺が下から覗き込むとアンナ姉さんは後ろを向いてしまう。 「い、今のはもしかして無意識なのかしら?」
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