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裏門から出て道路へ。
ただし、中々大きな通りでは有るが、これも裏通り。
屋敷の周囲ををぐるりと半周して大通りに出る。
大通りでは、考えてた通りに真ん中寄りを行く。
この方が歩きやすいのだ。
この街の通りは馬や馬車の通る車道と歩行者の歩く歩道は別れている。
だから馬は広く、それほど通行量は多くない車道を行ける。
因みに、車道は左側通行だ。
「何か見られてね?」
貴族街では差ほど珍しくもないユニコーンと騎手だったのに、一歩平民街に入ると急に視線が俺に集まってきた。
ウラヌスじゃなくて俺を見ている。
更に言えば、俺の顔ではなく俺の胸を見ている。
「う~~ん。
やっぱり、あの家ってかなり有名な家なのか?」
今俺が着ている騎手服の胸ポケットには、奥様の家の紋章が入っている。
この世界に来たばかりの俺にはさっぱりなのだが、どうも中々に有名な家らしい。
庶民が知っているんだしな。
うん、知名度の程度は知っておいて悪くない。
あとは良い噂かどうか知りたい。
使える所まで使いたいけど、使い方には気を付けたいんだ。
「お前が話せれば楽なんだけどな~~…………おい、肉まんなんて買わないぞ?」
この馬、何に食い気出してやがる。
俺は手綱を引いてウラヌスの軌道を元に戻す。
肉まん屋になんて用は無いだろ。
肉まんは馬が食う物じゃない。
「俺んち着いたら人参やるよ」
人参好きだろ、馬なんだから。
ところが、ウラヌスは足を止めた。
アクビまでしてる。
ストライキと来やがったか。
人参嫌いなのかよ。
「…………腹壊すなよ?」
そうまですんなら買ってやる。
俺はウラヌスを歩道に寄せ、店先で肉まんを二つ買った。
俺もちょっと食べたかったんだ。
「ほら、食いながら行くぞ」
肉まんをくわえたユニコーンと騎手が道を行く。
何とも奇妙な図になってしまった。
まぁ、満足そうにしてるし、買い食いが四宮にバレなきゃいっか。
俺はしばしウラヌスに揺られ、自分の住まいへと一度戻った。
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