やる気出ない

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「的と防具の調整について……あと、諏佐と草薙と俺の装備について聞いとくか」 これから聞くことを口に出して確認しながら、俺は石造りの店に入った。 店は中々に広く、展示品の武具甲冑が置かれているのだが、俺は物色したりせず、まっすぐカウンターの前にある椅子に座った。 「いらっしゃいませ」 俺が椅子に座るとすぐさまエルフの少女が日本語で応対してくれる。 見た目は短髪で活発な印象を与えてくる十七か十八の美少女。 だが、多分実年齢は俺よりも上だろう。 エルフ、何て残酷な生き物なんだ。 まぁ、俺としては、見た目さえ良ければ、大した問題にはならない。 結衣がいるから手を出したりしないけどさ。 「弓の練習用の的を…………四つ買いたいんですけど」 裏庭の広さを考えれば四つかな。 仕事が休みの奴に練習させる事になりそうだし、そんくらいで足りるだろ。 「五つお買い上げいただけるなら、五つ目を二割引にさせていただきますが、どうしますか?」 「じゃあ…………五つで」 痛み方によっては消耗品かもしれないし、多目に買うのも有りだよな。 決して、少女の営業スマイルに負けたわけじゃない。 ……………本当だよ? 「あと、朝比奈で頼んでおいた旧日本人協会宛の装備ってどうなってますか? 代金は先払いで済んでる品です」 「少々お待ちください」 少女が俺の前から一度離れ、店の奥で書類を見てから帰ってきた。 走んなくてもいいのに。 「全て準備出来てます。 これから配送しますが、的の方も一緒でよろしいでしょうか?」 「お願いします」 こっちの世界で気に入ってる事。 少し大きい店だと商品を届けてくれるのだ。 こう言った鍛冶屋兼武具屋の場合、おそらくは一番新しい弟子に当たる人物が配達してくれているのだろう。 ありがたい話だ。 でなかったら、俺が呼んだ草薙辺りがメンバー全員の装備を持って帰る羽目になるだろう。 「では、的の代金はこちらになります」 的の代金が書かれた紙が出てきた。 思ったよりは高いけど、大した出費じゃないな。 俺は財布から代金を支払い、少女の「毎度ありがとうございます」と言う言葉を聞いて、店をさっさと出る。 用はもう済んだし、長居は無用。 腹減ったし、さっさと奥様の屋敷に帰らないと。
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