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いつまで経っても、彼は帰ってこない。
もう学校は封鎖される時間だと言うのに。
また、何処かで無茶をしているのだろうか?
そう思うと、なんかもやもやする。
「チョコ、頑張って作ったんだけどなぁ・・・」
テーブルに置かれた、ハートの形をした包みに入っている今日のために作ったチョコレート。
プルートとヒスイにも手伝ってもらったものだが、最後まであまり上手く仕上がらなかった。
「・・・遅いな」
七時、八時、九時、十時。
もう待ち始めてから五時間は経った。
玄関のチャイムが鳴る。
「来た!」
勢いよく玄関に出て扉を開ける。
「おかえり!」
だが、想像していたのとは、違う人物だった。
【---君は、澱ではないね。・・・この匂いは、あの忌々しい双剣か。悪いけど、双剣を出してもらおうか】
右耳には板型のピアス。そして、普通ではあり得ない白目と瞳の逆転した眼。
何より、この威圧感。
「何、者だ・・・!!」
やっとの思いで出した声は、枯れていた。
緊張感で喉が渇く。脚が震える。
【---そうだね、何者かと聞かれたら、答えるのが情けだね。あの人たちも言っていたけれど】
独り言のように適当に呟いている節がありそうな目の前の化け物は、こう言った。
【---僕は、世界を壊す者。ユウ=アルトロ。魔王は知ってるんだろうけど】
普通のやつが言えば、冗談に感じるが、こいつは本気だ。逃げるか?だが何処へ?
・・・プルート。
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