きっかけ

11/21
前へ
/76ページ
次へ
一方、健太と沙希は居酒屋で二杯目にとりかかっていた。 あまり、気がすすまないまま、健太についてきた沙希だが、元々が酒は好きな質だし、飲んでいるうちにだんだん機嫌も良くなってきていた。 健太はいたってご機嫌で、 テーブルに肘をついて、やや前のめりになって、ハイペースで飲んでいる。 沙希は軽く椅子に腰をかけ、足を組み、機嫌よく飲みながらも健太を観察していた。 「沙希さんて、見た目よりぜんぜん話やすいっすよね。」 「そう? 取っ付きにくいように見えるかな? まぁ 見た目と中身の ギャップがあるって、たまに言われるけどね。」 健太は酎ハイを大きく、がぶっ と飲んでドン、とテーブルに戻す。 「いやっ~ 取っ付きにくいっつうか、スゲー仕事も出来る大人の女に見えるっつうか、正直言えば、朋美の写メ見て、連れて来いって何度も言ってたんすけど、 マジ来たら、俺、何話す? 俺と合う話あんのかよ? って思ってたんすよ。」 ふぅん…と軽く何度かうなづきながら、沙希は言う。 「そういうのを、取っつきにくいって言うんじゃないの?」 いたづらに片目をつぶり、少し横を向きながら、指でピストルの真似をして、健太に向ける。 「いやぁ~ そうっすね… 」 クスクスと笑う沙希を見ながら、 ぽりぽりと頭をかく。 お酒が 回ってきたのか、健太の顔は うっすら赤くなっている。
/76ページ

最初のコメントを投稿しよう!

73人が本棚に入れています
本棚に追加