きっかけ

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二人が出かけた部屋で、 食事の後片付けをしながら、 今度、小さくため息をついたのは、朋美だった。 やっぱり、健ちゃん、 沙希と出かけちゃった。 嬉しそうにさ… 自分も一緒に行けば良かったかとも思ったが、健太が他の女に嬉しそうに話かけるのを見たくなかったし、 自分が年上な事を、十分意識してたから、あまり束縛するより、余裕の態度をとったほうが、同年代との違いがあっていいんじゃないかと、思っていた。 ∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵ 付き合い初めて、まだ間がない頃 朋美の写メを見ながら、ある一枚の画像を止めて、 健太が言った。 『うおっ、これ誰?』 『ああ、沙希だよ。美人でしょう。』 『マジ、友達? 今度連れて来いよ。綺麗なお姉さんと遊びてぇー。』 普段からあまり化粧もせず、洋服もカジュアルなものが多く、年よりも下に見られる事が多い朋美と比べて、 沙希は大手アパレルの広報担当という仕事がらもあり、メイクもファッションセンスもこなれていて、21の健太からしてみれば正に、綺麗なお姉さんという感じだった。 手放しで沙希を誉める健太が面白くない朋美は、 『でも、沙希って男に不自由してないっていうか、年上の彼氏もいるよ。』 さりげなく朋美の腰に手を回して、軽く抱きしめながら、 『バ~カ 朋美もいるのに、 付き合いてぇなんて思わねえよ! ただ、年上のお姉さんってちょっと憧れるじゃん?』 と、悪びれた様子もない。 私も、年上なんですけど……と 言葉には出さずに、 ぷっくりとした唇を尖らせて、 朋美は健太から顔を背ける。 そんな朋美の横顔を見て、 軽く笑いながら、唇を重ねる 重ねた唇は、離さないまま小さく呟く。 『ゴメン…』
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