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Void Slaughterer 空の招かるざる客
その光景は幼い少年にとって地獄と言う言葉が合っていただろう。
彼の生まれ育った所は跡形もなく消えつつあった
「何で…」
彼には空に現れた大きな影が恐怖そのものだった。
昔話や御伽話でしか聞いたことの無いような存在が今目の前に…
…招かざる客として現れた。
空を駆け、地上を焼き
見るもの全てを狩りの対象としか見なさず
「それ」と目を合わせた者は間も置かれることもなく狩猟されていった。
「…逃げないと!」
茶色の混じった橙色の髪が大きく揺れた。
自分だって対岸の火事では済まされない。
いつ自分が目の前の散らかった肉片にされてもおかしくない
自分も何とか安全な所に移動しなければならない。
とにかく走った。
子供の小さな体では一歩の距離は小さいかも知れない
けれどそんな事は頭に無かった。
ただ今は逃げることだけしか彼の幼い思考は考えられなかった。
一歩の差が命取りになるのだと…
人間という最も本能という部分が退化した動物である彼のなけなしの本能がそう言っていた。
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