本当のお別れ

3/13
前へ
/13ページ
次へ
べっとりと汗染みのついたシャツを脱ぎ、熱いシャワーを浴びて、石鹸で体をごしごし洗った。 酒臭さもほとんどなくなり、頭痛もひいてきたころ、もう一度鏡を覗くと、さっきよりはだいぶマシな姿になったいた。 濡れてボリュームのなくなった赤い髪、母親に似た緑の目、透けるような白い肌― 急に後ろでガタっと音がして、クラリーの注意が鏡の中の自分からそれる。 クラリーはゆっくり振り返り、何も変わらないバスルームを見て安堵のため息を漏らした。 そして前に向き直り、鏡に自分以外の人物が映っていることに気付くと、はっと息をのんだ。 「あなたは誰?」 おそるおそる聞いてみた。 普通の人ならここでパニックを起こすとこだろうが、クラリーはほとんど慣れていた。 クラリーには幽霊が見えるのだ。 でもさすがに幽霊という者は理解しがたく、いきなり姿を現すのには驚かされるものだ。
/13ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加