1人が本棚に入れています
本棚に追加
「や、やっぱりバカにしてるじゃないですかーっ!」
私が涙目になって睨みつけていると、ようやく笑いが治まったらしく、態勢を立て直した。
「いやー、失礼しました~。それにしても驚きましたよ」
そう言って、クリップで止められた書類をどこからか取り出した。
「鈴郷 胡桃、15歳。中学校の三年間は孤児院で肩身の狭い思いで過ごし、森芽屋高校合格後、すぐに森葉荘へ住む。・・・この書類を見たら普通、金をよほど欲していると思いますよ」
個人情報がバレていることに焦りを感じ、顔が引きつってしまう。
(大丈夫。幼稚園~小学校卒業までのことは偽造してあるはず・・・)
あの時代のことは、誰にも知られてはいけない・・・。
「まぁ、金を欲する人間が1番恐ろしいバケモノなんですよね~。わたくしはねぇ、そのバケモノの中でも何か起こしてくれそうな人を直接勧誘するんですよ~。さっきは期待ハズレかと思いましたが、お嬢さんは別の意味で何か起こしてくれそうですね」
道化師がスッと空を切る仕草をすると、その左手には白いチケットが乗っていた。
「?」
「これは、我々からの招待状です。運命を変える大きなチャンス!あなたは選ぶでしょう!正しい道を」
私の手にそっとチケットを握らせると、顔を近づけて囁いた。
「ナイトメア・サーカスに関わることを参加者以外の者へと他言した場合、我らは秘密を広げないよう、元から抹消しますので」
(命は無いってこと・・・?)
「では、会場でお待ちしております」
道化師は優雅に一礼すると、パチンと指をならした。
(・・あれ?なんか、眠たく・・・なっ・・て・・・)
そのまま私の意識は、暗闇へと沈んで行った。
最初のコメントを投稿しよう!