リリィとウサギのオジサン

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「……どこか痛いとか苦しいとかないかい?」 リリィの耳に入るウサギの声は、これまで聞いてきたどの声よりも素直に受け取る事が出来た。 記憶はないけれど、今までどんな立派な声も言葉も「虚飾」に満ちた偽りにしかリリィには感じられなかった。 だが、せっかくの心に届いた質問には答えるには難しいくらい、リリィの心は歪んでいた。 「ねえ、私は生きているの?死んでいるの?」 「生きているよ、喜ばしいことにね」 ぬいぐるみはリリィの言葉にしっかりと答えてくれた。 "よろこばしい"が不思議とうれしいという意味だとわかっている。 けれどそれが、今度は少女の不思議となる。 「ねぇ、本当によろこばしいの?」
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