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ザワザワとたくさんの人が行き来する。
大きな荷物を持った人。
早足で通り過ぎる人。
家族連れ。
半袖を着ている人もいれば、
コートを片手に歩いている人もいる。
『日本航空出発便 JL2XXXX ニューヨーク行きにお乗りのお客様は
まもなく搭乗手続き締切のお時間となります……』
お姉さんのキレイな声でアナウンス。
これ、お母さんの乗る便だ。
「じゃ、そろそろ行かないと」
お母さんは心配そうに私を見る。
大きな荷物は預けてしまい身軽になったお母さんは、
私の肩に手を置いて、置いていかれる子犬のような目をしていた。
そんなお母さんの不安を打ち消すように
私はニコッと笑って言った。
「うん。
気をつけて行ってらっしゃい!!
体調管理はしっかりね!」
お母さんは私の肩をポンと叩くと、
「麻希はしっかりしてるから、大丈夫だと思うけど、何かあったら、すぐ雄おじさんに連絡してね」
まだ不安そうな表情で言う。
「はぁい。もうわかったよ。
何十回も聞いた。大丈夫だから」
私はお母さんの後ろに回り背中を押した。
「いってらっしゃい!」
元気な声で送り出す。
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