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「俺さ、広瀬があまりにもハメを外さなかったら、目をつぶるからさ」
いつもしっかり目を見て話す先生と、今は目が合わない。
「ハメ?外さないよ。
私、真面目だし」
夜遊びとか男遊びとか、タバコとかお酒とかドラッグとか?
考えたこともないし。
「そうなんだ。
まぁ、そいう言うことがあったとしてもさ。
うるさく言わないつもり」
そういうことって、何?
「まぁ、はい。
ありがとうございます」
釈然としないまま頷いた。
で、先生は、何が言いたいの?
「だからさ、
広瀬も、俺んちにいろいろ人が来たりするけど、いちいちみんなに言いふらすなよ」
なに、それ。
先生は、また手で頭をかく。
先生が困ったときに良くするこの仕草が、
結構好きだった。
「……人が来るって、彼女とか……?」
認めるのが怖くて、声が震えてしまう。
先生は、明らかに言葉に詰まって、また頭をかいた。
本当、分かりやすい、子どもみたいな先生。
「そっか……」
つまり『俺の家には、彼女がくるけど、気にするな。そして言いふらすな』
ってことをわざわざ私に言いに来たってことか。
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